ケイカ -桂花-
母性本能
放課後、私は職員室にいた。

担任と面と向かって話をするのは4月の個人面談以来だ。

「桂さん、S町であなたを見掛けたって人がいるんだけど。それも夜遅くに」

夜、を強調した声にドキッとした。

ケイの店、あの辺S町っていうんだ。

「どうなの?行ったの?行ってないの?」

責める口調に、

「行ってません」

すんなり嘘がつけた。

「そうよね、S町ってちょっとあれだし。じゃあいいわ」

ホッとした声を出して、あっさり開放された。

面倒くさい事を避けたいのはお互い様だ。


きっと制服がまずいんだ、明日から着替え持って来よ。

カバンを取りに教室に走りながら考えていた。
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