ケイカ -桂花-
ちょっと待ってみたが、チョコをくれる気配も次の言葉も無い。

チョコが欲しいわけじゃないけど、聞いただけって、何なの?

ワケ分かんない。

もう付き合ってらんないよ、遅くなっちゃったし。

今度は何も言わず、宮崎に背を向けて歩き出した。

「桂」

また?なんだよ?

首だけで振り返ると、顔を傾けた宮崎が笑って言った。

「明日持ってくるよ、甘い方」

その笑顔が意外に爽やかで、その顔に合ったハキハキした声だった。

「いらなーい」

宮崎の視線を逃れるように、前を向いて歩きながら言った。

嫌なわけではなかったけれど、なぜだかそんな言葉が出た。
< 64 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop