ケイカ -桂花-
ここ数日間、私は、宮崎の観察をしている。

他の誰にも、もちろん本人にも気付かれないように、こっそりと視界の端に入れた。

宮崎は典型的な目立たない男子だった。

良くも悪くも、みんなに注目された事は今までにない。

男子にも女子にも積極的に話しかけたりしないが、友達がいないとうわけではない。

休み時間やお昼には数人でしゃべったり、笑ったりしているし、その声が離れた私の所まで届く事もあった。

ごくたまに女の子に話しかけられると、赤くなって下を向いたり、頭をかいたりと居心地の悪そうな感じに見えた。

あ、あの子、昨日も宮崎に話しかけていた子だ。

昨日と同じ様に、不意に近づいて2言3言しゃべると、すぐに自分のグループへ混じった。

あの子も「母性本能を--」って思ってるんだろうか。

あ、やばっ。

見過ぎてた。

宮崎と目が合ってしまった。

だけど宮崎は、前みたいに見つめたりしないで、スッと目を逸らした。
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