ケイカ -桂花-
「なんか、いいよねー」

ケイの声に甘ったるさが混じった。

うわ、やだ。

目がトロンとして、スイッチが入った。

「セイちゃんがさぁー」

出たっ、オヤジ。

「付けたんだよ、ハナの名前」

「ふーん。お茶から名前とったって、それどうなの?」

「あら、お茶だけじゃないわよ、お酒だって香水だってあるわよ」

「どっちにしたって、一緒じゃん」

「ああ、違うわよー。桂花ってキンモクセイのこと。秋になるとすっごいいい匂いで花咲くでしょ?」

「あー、あの黄色の?」

「そうそう、それ。セイちゃん大好きなんだって。私も1番好きな匂い。気が合うのよ私達って」

ドサクサに紛れて、なにノロケてんだよ。

「えー、趣味悪っ。あれってトイレ臭いじゃん。キンモクセイの匂いすると、いつもトイレ思い出すし」

わざと大げさに嫌がって見せた。

ケイは不機嫌になって黙ってるけど、ノロケたケイが悪いんだからね。
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