きみと、もう一度
幸登に会えて、よかった。一五歳の幸登に会えてよかった。
秘密だといえば、それを無理やり聞き出そうとはしない。それは、興味がないとかどうでもいいとかじゃなくて、わたしがそう言うから、ていうだけ。
わからないことを、わからないままで受け入れる。わからないことに無理やり答えを見つけ出そうとはしない。
だけど、問題にぶつかった時は、彼はその瞬間の自分を信じて行動に移せるのだろう。後悔するから、ではなく、したいと思ったから。自分で正解不正解の答えを出さずに、事実として結果を受け入れ、向き合っていくんだろう。
わたしは、そんな前向きな幸登のことが、好きだったんだ。
彼はいつだって、いいことも悪いことも、いろんな新しいことをわたしに与えてくれていた。今のわたしがあるのは、今までのわたしがいたから。幸登と一緒に過ごした時間も、今のわたしの一部だ。
大事なものは一五歳のときに失ってしまったんだと思っていた。
だけど同じくらい大事で大好きなものが、この五年間でわたしはちゃんと見つけていた。
わたしはそれを失いたくないんだ。これから先、もっともっとわたしは幸登と過ごしたい。だから――五年前と同じような結末のまま歳を重ねたい。
出会えてよかった。
思い出せたのは出会えたから。だから、ありがとう。
この答えが正しいのか間違いなのかは、今でもわからない。もしかしたら答えなんてないのかもしれない。でも、今も昔も、わたしは一生懸命だったよね。必死で、幼いなりに出した答だったんじゃないかな。
後悔ばかりをして、ずっと前を見ていなかった。
そんな自分と卒業するために、わたし、ここに来たんじゃないのかな。
それは自分勝手な解釈かもしれないけれど、だけど、わたしはそう思う。だから、それでいいんだ。きっとそれが、答えなんだ。
やっと前に進めた気がする。
この先の五年で、わたしは高校生になって、お菓子を作って遊びまわって、同じ大学に行って、また、幸登と出会って、恋をするだろう。
告白して付き合って、一緒に暮らしてたくさんのケンカをしてたくさんの話をしよう。わたしは何度も幸登をうんざりさせるかもしれないし、わたしも幸登に呆れることがあるかもしれないけれど。
そんなふうに、もう一度、きみとこれからを過ごしたい。
わたしが知らない五年後の、その先も、一緒に。