きみと、もう一度
目を覚ましたのは幸登よりもわたしのほうが早かった。
やっぱり、実家のほうが大阪よりも寒いのは、盆地のせいだろうか。底冷えするような冷たさがないために、目覚めはよく布団からもすんなりとぬけ出すことができた。
ベッドには、まだ幸登がすやすやと眠っている。温かったのは彼がとなりにいたからかもしれない。つり上がっている目元は眠っているととても優しい顔に見えた。
洗面所で、二十歳のわたしと見つめ合う。
「おはよ」
しばらくしてから幸登が起きてリビングにやってきた。テーブルの前に座ってペンを握るわたしを覗き込む。
「なにこれ。ああ、この前言ってた同窓会か」
「うん、返事しなきゃなって」
「行くことにしたんだ」
出席、を丸く囲ったのを見て幸登はひとつ欠伸をした。大きく口を開けてこぼれかけた涙を拭ってからタバコを手にしてベランダに行く。
「せっかくだし、ね。中学以来会ってない子が沢山いるし」
それに、セイちゃんに謝らなくちゃいけないから。今坂くんにも、会いたいと思うから。
「中学か、五年前? 俺なにしてたんだろな、覚えてねえなあ」
幸登は、相変わらずだったよ。わたしの夢のなかでは、相変わらず自由で、まっすぐで、とても優しかった。でも、きっと本当にあんな感じだったんだろうな、と思う。
「なんかいい思い出でもあんの?」
「え?」
「こないだは嫌がってたのに、なんか楽しそうだから」
窓際にもたれかかり、煙草を咥えたまま、少し優しそうに笑った。
そんな顔しているかな、と自分の頬に手を当ててみると、口許が緩んでいるのに気がつく。
「そう、だね」
うん、そうかもしれない。色々あったけれど、やっぱり、あの日々はわたしにとって、宝物みたいに輝いている。
今のわたしの中に、そっといつまでも大事に置いておきたい、とっておきの思い出だ。