きみと、もう一度
この世界で、わたしの力はどのくらいあるのだろう。
どんな行いをすれば、結末を変えることができるだろう。
わたしはなにをしたかった? どうなりたかった?
同じような後悔や未練を残さないように、過ごすことは出来るだろうか。
目を閉じて、深く息を吸い込む。冷たい空気が肺の中に入ってきて、体を一周する。手に力を込めて立ち上がり、ベッドのそばにある窓際に立った。
ガラスにはたくさんの水滴がついていて、窓をあけると室内の何倍もの冷気がわたしを襲ってくる。真っ暗な視界に、幾つかの街灯。
そこでもう一度呼吸をする。
吐き出した白い息を見て、幸登の煙草を思い出した。暖房の聞いた部屋で窓を全開にして煙草を吸う幸登。
一五歳の幸登は、今、どこかにいるのだろうか。彼はどんな学生時代を過ごしたのだろう。
わたしがしようとしていることは、二十歳までを過ごした日々もなくなってしまうことかもしれない。けれど、五年間思い出す度に思いを馳せた〝もしも〟があったから、わたしはここにいるのかもしれない。そんな思いを抱かない過去を過ごせたほうが、正しい未来が待っているに違いない。だからこそ、ここに戻ってきたんじゃないだろうか。
目を覚ましたら、結局二十歳に戻ってる、ということもあるかもしれない。
そうだとしても、同じような後悔は一度で十分だ。もう一度挑戦できるのであれば、やるしかない。
今度は、今度こそは――もう一度。
ゆっくりと夜空に息を吐き出すと、さっきと同じように煙草の煙と似た白い息が出てきた。
思い出したのは外に向かって紫煙を味わう後ろ姿の幸登と、ゲームに熱中している姿。声をかけても振り向かない、約束をしても忘れ去られる。会話もメールも最低限の関係。
なにもしないまま過ごせば、迎えるのはこの未来だ。