きみと、もう一度
学校ではもちろん、昨日のドラマの話ばかりだった。
紗耶香と真美はわたしの予想があたったことに驚いたらしく、「なんでわかったの?」とばかり聞いてくる。
なんとなく、と返事をしながら交わしている間に予鈴のチャイムが鳴った。
いつもどおり、今坂くんはギリギリにやってきてわたしと目が合うと「おす」と笑う。それを見ていたセイちゃんがニヤニヤした顔で肘でこついてきた。
セイちゃんは、いつも通りで、むしろ五年前の告白が嘘だったのかと思うほど、わたしを応援してくれている。
わたしに向けられるその瞳には、嘘や偽りは感じられなくて、それがなおさらわたしを戸惑わせる。
純粋に応援してくれていると感じるからこそ、不安に支配されていって、セイちゃんはもちろん今坂くんにも挙動不審な態度を見せてしまった。
お昼休みに話している間も、セイちゃんの行動が気になって仕方がない。今、なにを考えているのか、どう感じているのか。
わたしがセイちゃんに素直に告げたことが、間違っていたんじゃないかとすら思えてくる。予想外の展開に、このままでいいのか、この先どうすればいいのかを考えているうちに一日の授業はあっという間に終わった。
「なあ、宮下ー!」
今日の最後の授業の英語が終わり、先生が教室から出て行くとすぐに今坂くんが慌てた様子でセイちゃんを呼びかけた。
どうしたんだろう、と純粋に気になる気持ちと、セイちゃんの様子はどうだろうと振り返ると、ふたりが電気ヒーターの前で話をしてから、教室を出て行くのが見えた。
どうしたんだろう。
見た感じでは、今坂くんがセイちゃんに用事があるような素振りだった。話しかけてから廊下に出るように促していたのも恐らく彼だ。
気にするようなことじゃない、と思うのに身体中が落ち着きなくそわそわと動く。後ろめたいことなんかなにもないのに、なにを話しているのか、とそればかり考えてしまう。カチカチと無駄にシャーペンの芯を押し出しては戻し、押し出しては戻す。
神経質そうな音が、続く。
五年前の今日は、どんな感じだったっけ。あんなシーンあっただろうか。
目をつむって記憶を探るけれど、思い出せなかった。でも、なにかがあった気がする。なんだろう。なんだっただろう。