きみと、もう一度
あと、明日は早起きをしなくちゃいけない。
十二時に待ち合わせだから、十時には起きなくちゃ。化粧、はあまりできないけれど。
もしも姉がバイトでにもでかけていたらこっそり借りちゃおう。
そして髪の毛もちゃんとセットしなくちゃいけない。ヘアアイロンは家にあっただろうか。
わたしが使っていたものとは違うだろうけれど、これも姉に借りればいい。少しでもキレイに、できるだけ可愛く見えるようにしなくちゃいけない。
こんな風に、出かける前に服装に悩んだり、楽しみすぎて落ち着かなかったり、朝の予定を考えるなんて、すごく久しぶりだ。
大学に入って毎日私服になったから服装には気を使うようにはなったけれど、特別悩むようなことはなくなった。
幸登との初めてのデートは、こんなふうにワクワクしていただろうか。
そうだとしても、付き合いが長くなるに連れて、特別意識をすることはなくなっていったのだろう。一緒に暮らしてからは、ダサいジャージ姿だったりちょんまげ姿で部屋をウロウロしているくらいだ。
幸登だってわたしにそんなもの求めてない。以前出かける前に「靴が決まらない」と言ったら「どうでもいいだろ」と言われた記憶がある。
今、こんな気持ちになるのは、わたしが十五歳だからだろうか。
それとも、相手が今坂くんだからなのだろうか。
嫌いになったわけじゃないのに、比べてしまうのは、どうしてだろう。
好きだと思っていた幸登への気持ちはどこに行ってしまったのだろう。
もしかしてわたしは、過ぎ去った過去だと思っていたけれど、ずっと今坂くんのことを好きだったのかもしれない。もしくは、十五歳に戻って、また、彼に恋をしてしまったのかもしれない。幸登よりも。
幸登と暮らしていた日々を思い出す。
十五歳に戻ってからたった三日だというのに、とても懐かしく思えた。すごく遠い、はるか昔のことのような気がした。