きみと、もう一度
わからない未来を想像すると、突然視界が真っ白になって足許から不安が襲ってきた。
この先も、今までのようにわたしは、セイちゃんの一番でいられるのだろうか。
卒業までの一週間で望んだ結末を得たとしても、そこから先は、なにも知らない。なにが起こるのかも、どんな変化があるのかも、わからない。
「大塚は、私立の女子校だっけ?」
「あ、うん。セイちゃんは公立だけど」
「オレは男子校」
みんな、バラバラになってしまうんだなあと、突然実感する。そうか、学校に行くのは卒業式を除けばもう、あと一日しかないんだ。
セイちゃんとは、家が近いから高校が離れても家に行こう。高校に入ったら携帯電話を持つことが出来るはずだから、頻繁に紗耶香や真美とも連絡をとって、四人で集まらなくちゃ。卒業式を乗り越えても、まだまだ変えたいことがある。
学校の授業が忙しくてメールの返信を放置してしまったことがある。
連絡が来ないからといってわたしからも送ることが減ってしまったりした。
今度は――と考えたところで、ふ、と視界が遮られた。一瞬が起こったのかわからず「へ」と素っ頓狂な声を出して瞬きを繰り返す。よく見ると、それは小さな茶色のストライプ柄の紙袋だった。
首をこてんと倒して奥にいる今坂くんに視線を向けると、向かいにいた彼が照れくさそうに「あげる」とわたしの手にそれをのせた。紙袋と今坂くんを何度か交互に見るけれど、彼は私と目を合わせようとしてくれなかった。小さな紙袋には、小さなリボンのシールが付いている。
さっき妹へのプレゼントを買った店と同じロゴも隅っこに入っていた。
「なに、これ」
「え、と。今日の、お礼」
お礼って、もしていないけれど、もらっていいんだろうか。さっきプレゼントを買うときに、これも一緒に買ってくれたってこと?
「開けていいの?」と問いかけると、今坂くんは相変わらずそっぽを向きながら「ん」と短い返事をした。彼は照れると少しぶっきらぼうになるらしい。
袋を破かないようにゆっくりと封を開けると、中から大きな星柄のモチーフのヘアピンがふたつ出てきた。
「実は、今日……宮下を誘ったんだけど、用事あるって言ってて……」
セイちゃんの名前が出てきたことを理解するまで、少し時間がかかった。