キミのトナリ
「…だめだ
見えない」
ママは残念そうに
首を伸ばすのをやめる
「ママ
聞こえてるよ」
はっと
ママは自分の口を塞ぐ
…ママまだ行くことを
諦めてなかったんだ
「ママがもうちょっと
視力が良かったら…」
なんてママはまだ
ぶつぶつ言ってる
「ごちそうさま―」
陽菜は綺麗に全部たいらげると
ケータイを持って
自分の部屋に戻る
早く隆太に話したくて
自分の部屋に入ると
即座に隆太に電話をかける
「もしもし
陽菜?」
隆太はいつも二回目のコールで
電話に出る
「もしもし亀よ
亀さんよ~♪」
「もう童謡はいいから」
って隆太がばっさり言う
「で、どうしたの?」
「あのね!!
今日、中学の親友から
同窓会のお知らせが来たの―♪」
「へ―
良かったね
いつ?」
「明明後日!」
「明明後日?
それ僕が帰ってくる
日じゃん」
…そういえばそうだった
と今さら思い出す
「忘れてただろ」
う
みぃ―なに会える事が
あまりに嬉しすぎて
忘れてた
「…うん、すっかり」
「彼氏が帰ってくる日
忘れるってどうなの?」
電話越しに聞こえる
声がいつもより
ちょっと怒ってるような気がする
電話越しで顔が見えないと
いつもより余計に不安になってしまう
「…ごめん」
隆太が電話越しに
笑ってる声が聞こえて
自分がはめられたと分かる