キミのトナリ
「うそだよ」
と隆太が言う
「もう、やめてよ―!
不安になったんだからね」と陽菜はちょっと拗ねた
口調で言う
「ごめん、ごめん」
と謝る隆太の声と重なって
後ろで隆太のチームの
人達の声も聞こえる
「先輩
彼女ですか?!
いいですね―」
「先輩かっこいいですね」
「陽菜さんですか?
仲良いですね」
だなんて褒め倒してるのは
多分口調からして1年生達だろう
「よし
お前らもっと褒め称えろ」
と隆太の声
大分調子に乗ってる姿が
目に浮かぶ
「そんな調子に乗ってると
痛い目見るよ」
って冷たく吐き捨てたのは
隆太の同学年の山田君だろう
「何?!
お前、陽菜ちゃんに
何かしたのか?!」
って言うこの声は多分部長さんだ
「はぁ?
何もしてないですよ」
ってちょっと受話器から
顔を離して言う
「隆太
先輩にそんな口聞いて
いいの?」
って陽菜が聞いたら
「うん、いいの」
って隆太はさっき部長さんと
話してた口調よりずっと優しい口調で
断言する
「よくね―よ!!」
って後ろで怒る部長さんの
声が聞こえる
「あ―
すいませんでした」
って怒る部長さんを
適当にあしらって
隆太は陽菜に言う
「ごめん
後ろの人達うるさくて」
「うるさい?!
お前なんてつるっぱげになって
陽菜ちゃんに振られろ!!」
って部長さんが叫ぶ
部長さんと隆太の
やり取りを聞いていたら
本当に仲がいいんだなぁ
って微笑ましくなる
隆太が
「先輩こそ禿げて
彼女に振られればいいじゃないですか
あ、そうか振ってくれる人
がいないのか」
と仕返しに嫌味を言う