キミのトナリ




「それは…」
と陽菜は口ごもる




「言わなかったんじゃなくて





言えなかったんだ」
って王子は言う





「言えなかった…?」




うん
と王子は頷く





「ひぃ―なは
みんなの人気者だったし




他のクラスの男子にも
好きな人がいたくらいだし






それにすごいかっこいい
年上の彼氏がいたし









どこかで絶対無理だ
って思ってたし



好きになんて
なってくれないって
諦めてたから





言えなかった



そういう人は俺以外にも
沢山いたと思うよ」
って王子が言う






その言葉を聞いて
隆太の顔が浮かぶ







「…ひぃ―なに
今日会えるの楽しみにしてたんだよ」
って王子は笑う





うんって陽菜は頷く





「ひぃ―なにもう一回
会えたらいいなって
ずっと思ってた





もう一回会えたら
今度こそ好きだって
言いたいなって思ってた





そうしないとちゃんと過去に
ならない気がして」




陽菜はもう一度頷く








なんとなく隆太の中学の時の
気持ちが分かった気がして
嬉しくなる





陽菜が記憶を取り戻したいと
思った時



過去を知らないと



前に進めないと思った
気持ちに

少し似てるとも思った





陽菜は
「ありがとう」
ともう一度お礼を言う




王子は首を横にふって
「聞いてくれてありがとう」
と笑う











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