キミのトナリ
また何か食べたいものを
見つけたのかと
陽菜の視線を辿る
陽菜が何を見つけたのか
分かった瞬間
僕は息が止まる
陽菜の視線の先にあったのは
たこ焼きでもクレープでもなく
“真山先輩”だった
…どうしてこういう時に
会ったりするんだろう
「陽菜、早く行こう」
僕は陽菜の手を引く
真山先輩がこっちに気付く前に
見えない所まで行かないと
でも陽菜はピタリと
そこから動かず止まったままで
「話さなくていいの?」
と僕の目をじっとまっすぐに見て
陽菜は聞く
…いつの間に
こんなに強くなったんだろう
と僕は思う
僕はその目から視線を反らす
陽菜の目が
余りにも真剣で真っ直ぐで
“過去”からまだ
逃げ続ける僕がなんだか
惨めに思えて
「話す事なんてないよ」
と僕は
首を横にふる
陽菜は
「あるよ」
と小さく震えた声で言う
僕はもう一度
首を横にふる
「あるよ!!」
とさっきより大きな声で
強く陽菜は言う
僕の両手をきゅっと
握って
「あるでしょ?」
陽菜は涙が溜まった目で
じっと僕を見て聞く
「まだ逃げるの?」
陽菜の言葉に僕は何も言えなくなる
…陽菜は気付いてたんだ