キミのトナリ





「俺はもう陽菜の事は
忘れようと思ったよ



もう最初からいなかった事に
なろうって






無責任な男だなって思ったよ





でも陽菜が幸せになってくれたら

それが一番だと思った





だからもういなくなろうって



消えようって





でも罪悪感とか罪とか
はずっと消えないままで




苦しくて






そうしたら




もう一度陽菜に会えた




隆太にあんだけ言われて
陽菜と話すなんて



悪いとも思ったし
自分勝手だと思った






でも言わなきゃ
過去には出来ないと思った





前には進めないと思った








まだ全部が消えた訳
じゃないけど





陽菜に話した時
やっと過去になった

って思った」







僕はやっと分かった






全部無理に消そうとしなくてもいい



消えないものだって

後悔だってある






それでも過去を受け止めないと





前には進めない







「…隆太の大切な陽菜
を傷つけてごめん




許してほしいなんて
そんな事いうのは







なんかあれだけど」
って先輩は笑う






「もういいです」
これは先輩と自分に
言った言葉











「こんな事いう
権利はないんだけど





…陽菜の事よろしく」




「はい」




僕は頷く











きっとこうやって
色んなものが“過去”になって
いくんだろう








「…いつか今日の事も
笑って話せる日が
くるんだろうなぁ」
って先輩がぽつりと呟く





僕はその言葉に


きっとそうやって
だんだん大人になって
いくんだろうなぁ…


と思う



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