キミのトナリ








圭は私から離れると









「…思い出した?」


と何も言わず固まったままの陽菜に言う





「…思いだしてよ」

そう言う圭の声はかすかに震えている




「ちゃんと見てなかったでしょ」



圭はまたあの苦しそうな
笑顔を見せる










あの時と同じように







私は思い出す




「うそじゃないよ



好きだよ」






そう言った圭の顔






圭は私の目をじっと見て話す










陽菜がずっと見る事が出来ずに
背けてきた目









圭はゆっくり話し始める




「ずっとずっと






忘れられなかった」





圭の目はまっすぐに
私を見ている




あの日も圭はこんな風
に私を見てたのかな







「ほんとに



好きだった



大好きだった」






私の目から涙がこぼれる








「ウソつき」



あの日と同じ事を
陽菜は言う






彼の目を見れば嘘なんて
ついていない事はすぐに分かった





でもあの日


陽菜は怖かったんだ





目を見たら嘘を
見破ってしまいそうで






どうしてもっと
向き合ってこなかったんだろう



ちゃんと見ててあげれなかったんだろう



「嘘じゃないよ」







圭もあの日と同じように言う







「ほんとにほんとに






好きだったんだよ」








圭の目から涙が流れる








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