キミのトナリ






「また後で話すね!」






と陽菜は診察室に向かう








診察室に入ると
小倉先生は若干怒った表情を浮かべている




「…坂口さん


こんにちは」





「こんにちは」




と恐る恐る挨拶を返す





「遅れてしまって
ごめんなさい」





と素直に謝ると






陽菜があまりにもびくびく
してたのか
「大丈夫ですよ」




と小倉先生は笑う






良かったと
陽菜はほっとしていすに座ると





「では最近は
何か変わった事は
ありましたか?」



といつもの質問



「…思い出しました」





「え…?




今なんて?」



小倉先生はいつもとは違う
予想外の答えに聞き返す






「先生驚きすぎたよ!」



「あぁ


思いがけない事を言われたから






でも嬉しいよ」




「でも全部じゃないみたいなの





全部思い出したつもりだった
んだけど




何かが抜けてるの





不自然な部分がいくつか
あって」



陽菜の記憶に関する
手がかりのものが何もない事




思い出したはずが
穴のあいた記憶



そうかと先生は相槌を
打ちながらメモを取っている





「思い出した事はよかったけど



それによって
何か具合が悪いだとか
はあるかい?」



陽菜は頭を横にふる




「思い出す前になんどか
フラッシュバック
みたいのはあったけど




今はなんとも」




陽菜がそう言うと

「ただ気付かれないうちに

ストレスになってる事もあるから



気を付けて」

とだけ言われて診察は終わった




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