キミのトナリ









走っているとあっという間に
中学校の前までつく




ここには随分長い間
来てなかったのに
道をちゃんと足が覚えていた事に





ほっとして
またびっくりする





陽菜は息切れを押さえながら







中高共通の体育館へ向かう








体育館が近くなると





しだいに近くなってくる音






バスケットボールの
ドリブルの音



バスケットシューズの
キュッという音





その他には何も
聞こえない



広い体育館に
響く音





…懐かしい音













そうだ

陽菜が記憶を
無くす前にもこの音を聞いた





陽菜が圭に傘を渡しに来た時









校門で待ってたら
体育館からこの音が聞こえて








体育館を覗きに行ったんだ









そしたらそこにキミがいた








名前も分からなかった





身長もそんなにない



特に特徴がある訳でもなくて




普通に笑ったりもするけど



謙虚で



そんなに前に出てきたりしない人




よく圭と話してる人だ
って思った



圭がそういえば
「陽菜と同い年なんだけど


思いやりがあって
気配りができて
冷静で



でも本当は
ものすごく熱心で頑張りや

の熱い奴で




いい後輩だ」


ってベタ褒めしてたな




そんなに圭がベタ褒め
するような人なら





しゃべってみたいな
って思った





「あの!」



って思い切って言ったら
彼は返事をしなかった




そのまま前を見て
綺麗な弧を描いて
しゅっと音を立ててゴールに入る





唖然として口が開いて
目を奪われてしまった






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