キミのトナリ




「ふん ふん ふ~ん

ふふふふ~ん♪


ふふふんふ~ん♪」




さっき注意したばっかなのに

今度は鼻歌で歌い始める






「陽菜、鼻歌なら
いいってもんじゃないからね?」

と言うと



「え?



今、陽菜鼻歌歌ってた?」
と首を傾げる




「歌ってた」



「じゃあ歌ってたかも」



と陽菜は笑う





「可愛いなぁ」


って言うと陽菜は
照れたのかちょっと顔を赤くする





その照れてる姿も可愛い



「…照れてんの?


可愛い―」





ちょっと前だったら
絶対こんな事
言えなかったなぁ





今までは言えなかった事が
やっと言えるようになった



それだけで嬉しくて

涙が出そうになるのに






陽菜に触れられるようになった





今までは色々なものが
邪魔して






自分の気持ちを思うままに
言えなかった



今したいと思った事が
出来なかった





でも色々なものが
やっと溶けて





好きと言えるようになって



今したい事が今
できるようになった








そう実感する

まだちょっと戸惑いもあるし



まだ罪悪感だって
完全に消えたわけじゃない







でもいつか全部無くなって








いつの間にかこれが
陽菜と僕の当たり前になって





陽菜と僕の幸せになって





“過去”の事も
楽しかったね
あの時辛かったね
なんて笑って話せるようになったら









それだけが僕の願いだと思う







< 94 / 145 >

この作品をシェア

pagetop