キミのトナリ



「隆太?」




陽菜の声に
僕は顔を上げると



陽菜は心配そうに
僕の顔を覗きこんでいた







しばらく黙っていたから
心配になったんだと思う









僕が「ちょっとぼっ―としてた」
と言って笑うと










「…変なの


駅着いたよ?」
と陽菜は不思議そうに言う








そう言われて
外を見るといつの間にか
駅に着いていて








僕は陽菜の手を引いて







慌てて電車を降りる





僕の後ろで
プシューと扉の開く音がする



「危な…



もうちょっとで
乗りすごすとこだった」


と僕が言うと





陽菜は



「ほんとだよ


隆太しっかりして―」
と僕を叱る





「陽菜に怒られるようじゃ
終わりだな」

とちゃかしてみると






また陽菜はムゥと
頬を膨らます





「陽―菜



ごめんごめん」




「許さないも―ん」
と陽菜はふいっと横を向く











許すという言葉に
少しどきっとする









「え―




許してよ―」

と僕が言うと






しょうがないなぁ



と陽菜は言う








「…ちゅ―してくれたら許す!」








僕が立ち止まると
陽菜も立ち止まる






僕は陽菜にキスをすると






陽菜は「…許したげる!」
って笑う








「ちゅ―したいだけの
口実でしょ?」
と僕が笑うと






バレたかと
陽菜はちょっと照れたように笑う









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