十五の妄影(もうえい)
目を開いても、開いているのかどうかわからない。

それ程の暗闇の中で、私は目を覚ました。

…晋作君の妄影によって飲み込まれた私。

という事は、ここは妄影の体内なのかしら…。

胃袋?

それとももっと別の場所?

「……」

目の前にかざした自分の手すら見えないほどの漆黒の闇の中、私は周囲を見回した。

妄影に飲み込まれる寸前、私はもっとグロテスクな体内を想像していた。

粘液に塗れ、襞や内壁が蠢く、生々しい生物的な空間。

それが妄影の体内だと思っていたのだけれど。

…あまりに暗すぎて、平衡感覚すらなくなりそうだ。

ゆっくりと立ち上がってみるものの、立っているという感覚すらなかった。

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