十五の妄影(もうえい)
「なぁ、妄影…」

同情するように僕を包む妄影を撫でながら、語りかける。

「お前は僕の分身だから、僕の考えている事がわかるよな…?」

物言わぬ妄影は、僕の意思を汲み取るように…その姿を触手状に変えていった。

先端が棘のように鋭く尖った触手。

研ぎ澄まされた凶器。

その先端が、僕へと向けられる。

…世界を拒絶し、周囲の人間を拒絶し。

これ以上拒絶するものは存在しない。

あるとすれば…。

「何だ…やっぱりこうすればよかったんだ…」

周囲の人間を、消しても孤独、消さなくても孤独。

何も変わらない孤独な世界。

この世界を終わらせるには…僕が消えればいい。

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