十五の妄影(もうえい)
「駅前の靴屋さん、まだ開いてるよね?」

軽く小走りになる佐奈さんに引っ張られる。

「晋作君に新しい靴買ってあげるよ」

「え…でも…」

戸惑う僕をお構い無しに、彼女はグングン引っ張った。

「新しい靴を私だと思って!ほら、いつまでもしょぼくれてんじゃないわよ!」

佐奈さんは、僕の事を本気で考えてくれる。

何もかもが否定し、許容せず、認めてくれないこの世の中にあって、佐奈さんだけが僕という存在を、僕という人格を肯定してくれる。

その事が、泣き出しそうなほど嬉しかった。

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