十五の妄影(もうえい)
靴箱でスニーカーを履き替えるのは名残惜しいような気がしたけれど、仕方ない。

上履きに履き替え、教室へと向かう。

教室は三階。

階段を昇り、見慣れた…でも居心地がいいなんて思った事もない教室へ。

…おはよう、なんて言葉はしばらく使っていない。

ざわついていた、生徒達の談笑の響く教室。

それが、僕が入室するだけで。

「……」

一瞬にして静寂に包まれる。

向けられるのは、視線。

冷ややかな、視線。

軽蔑の、眼差し…。

そんな凶器にも似た視線にも、数ヶ月もすれば多少の免疫が出来てくるものだ。

鞄を机の横にかける。

…僕の席は、窓際後ろから三番目。

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