十五の妄影(もうえい)
ホームルームが終わり、申し送り事項を告げた担任が教室を出て行く。

一時限目は数学。

…あんまり得意じゃない。

だけど佐奈さんの家庭教師のお陰で、中学の時よりは理解できるようになっていた。

何より、授業中はいい。

先生が教室にいるという理由で、クラスメイト達の風当たりが和らぐ。

僕はクラスメイトに目を向ける事なく、窓の外か黒板を見ていればいい。

ナイフみたいな鋭い眼差しも、震え上がるような空気も、授業中だけは感じなくて済んだ。

何よりも嫌いな学校の授業が安息の時間。

中学の時からは考えられない事だった。

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