『舞桜』
「それは、私がじゃないです。
確かに私は東条ホテルの経営者の娘という立場ではあるけど、
それは私がすごいわけじゃないんです。
だから、やめてください。」
なんとなく、言いたいことが分かった。
つまり、自分がしていないことで自分が褒められるのはいやだってことか。
頼りないお嬢様かと思いきや、人間としては基盤がしっかりしているらしい。
こういう人間は好きだ。
「わかりました。
もう言わないようにします。」
「ありがとう。」
さっきまで綺麗な顔していたと思ったら、今度は溢れんばかりの笑顔。
そして付け加えるようにお願い事が一つ。
「東条さんなんて堅苦しいの、やめてください。
あと、敬語も。」