Je t'aime?




私が見たかった映画は、期待どおりのおもしろさだった。



恋愛ものならではの、ドラマチックな展開。



ポップコーンの存在も忘れるほど夢中になって、あっという間の二時間だった。



「あ~超泣けた」



館内が明るくなって、私が腫れぼったくなった目をパチパチさせていると、



「…ベタすぎる」



と祐太が文句を言った。



「ベタでいいの、映画なんだから」



やっと想いが通じ合ってハッピーエンドを迎えるはずだった男女に、突然病魔が襲いかかる。



弱っていく妻を目の前にして、なにもしてやれないと嘆くハリウッドスターの演技は真に迫っていて、私の胸を締め付けた。



最後にはゴッドハンドの医師が現れて、妻の病気も治り、今度こそハッピーエンド、という物語。



たしかに、ベタだ。



「だけど、それでもヒットしてるんだから、世の中はそういうのを求めてるってことなんじゃない」



感動冷めやらぬまま、私は席を立った。




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