Je t'aime?
「俺は最初、思い出作りなんだと思ってた」
「思い出…」
「怜奈は外国人と話すの初めてだって言ってたし、いい経験だな程度にしか考えてなかった」
祐太がポットに残っていたダージリンをカップに注いだ。
ちょうどそのとき、隣のテーブルに若い女の人がふたり、案内された。
だから私たちは、ますます小さな声で話しを続けて、そのせいで、余計に険悪な雰囲気になってしまったように思えた。
「短期留学生を相手に、こんな思いさせられるとは思わなかったよ」
「それはっ…」
私も同じ、と思った。
でもそんなこと、言えなかった。
「…ほんと、ごめん」
ただ謝るしかできなくて、紗江子との電話の再現みたい、と思った。
そのとたん、自分の情けなさに嫌気がさして、鼻の奥がツンとした。
そして、唇を噛みしめた努力もむなしく、私の目から涙が落ちた。
「でも怜奈、俺と別れたいって言わないんだね」
私はちょっと鼻をすすって、コクリと頷いた。
「紗江子ちゃんの忠告が効いてるのかな」
少し、祐太の口調が柔らかくなる。