Je t'aime?
―私は、あの電話の日からずっと意識していた。
本気にならないほうがいい、という忠告を、ウジェーヌといる間、ずっと心の中で繰り返していた。
「…都合がいいって思われるだろうけど、私、祐太のこともウジェーヌのことも好きだから」
だから、祐太と別れたくない。
それはあまりにも身勝手で、祐太の気持ちを考えれば、ひどすぎる発言だったと思う。
でもそれが、正真正銘の本音だった。
「だから、自分ではもう、どうしたらいいのかわからない」
隣のテーブルのふたりの視線を感じた。
でも気にしている余裕はない。
私はあふれ出る涙をタオルハンカチで拭いながら、
「祐太が決めていいよ。もう私みたいなの好きじゃないって思ったら、別れてくれていい…です…」
と言った。
私は下を向いてしまったから、祐太がどんな顔をしているのか見えなかった。
ティーカップをソーサーに置くときの、カチャ、という音だけが聞こえた。