Je t'aime?
「しかし暑いね~」
と、紗江子が額の汗を拭いながら、空を見上げた。
夕方になって、あたりはオレンジ色に染まってきている。
照りつける西日が、昼間のそれとはまた違う暑さを感じさせた。
「足元がすごいよ、モワァ~って」
「ほんと。地面がゆがんで見えるね」
アスファルトにうつる私たちの影が、奇妙な形で並んでいる。
「どっかで冷たいもの飲んで帰らない?」
と、紗江子が誘ってくれた。
でも、今日は早く帰らないと。
「あ~ごめん!もうすぐ祐太が家に来るんだ。帰らなきゃ」
「そっか、じゃあ私も真っ直ぐ帰るかな」
ガミくんの家から駅まで歩いて10分。
たったそれだけの時間なのに、夏の太陽は容赦なく私たちの肌を焼いた。
駅の改札を抜けて、ホームに立つ。
私たちのほかには、誰もいなかった。
ここは、いつ来てもこんな感じ。
電車の本数も少ないし、利用する人があまりいないみたいだ。