Je t'aime?
「…帰りたい?」
私は、静かな展示室でもようやく聞こえるくらいの、囁くような声で聞いた。
聞こえなければ、それでもいいと思って。
だけどウジェーヌにはちゃんと聞こえていて、彼はさりげなく私の肩を抱いて、
「パリも好きだけど、ニッポンも好き」
と、私と同じくらいの囁き声で言った。
「…答えになってないし」
私は肩を抱かれたのが照れくさくて、くるりと体の向きを変えて、その部屋から出た。
「レイナ」
と、ウジェーヌが追いかけてくる。
ウジェーヌは、ごめん、と私の背中に言った。
ごめん…?
「あ」
もしかして、私が怒ったと思ったのかも。