Je t'aime?




湖一周の旅を終えて、フェリーはふたたび乗り場へ到着した。



降りてもまだ少し、耳にエンジン音が残っていた。



「あんまり富士山見えなかったね」



と紗江子が不満げに言う。



そういえば、景色ばかり見ていたけど、富士山は小さくしか見えなかったな。



「向こうに行けば、見えるポイントがあるぞ」



というガミくんに先導してもらって、私たちは帰る前に大きな富士山を拝みに行くことにした。



ところが、やってきたのは、バス停。



「バスに乗るの?」



「猫の美術館のほうに戻るんだ」



「ええ~、だったら行ったときに教えてよ~」



「あの時間じゃ、どうせ暑すぎて見てられなかっただろ」



「ああ…まあ、そうだね」



人通りの多い道路の奥に、レトロバスが見えた。



レトロという名前のわりに、けっこうな速さで向かってくる。



私たちは、普通のバスよりもちょっと小さめのバスに乗り込んで、美術館へと引き返した。




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