Je t'aime?
それからしばらく、私たちは立ったまま話をして、笑ったり、ときどきしんみりしたりした。
ウジェーヌは、フランスに帰っても日本語教室で勉強を続けるそうだ。
初めて来た日本は、とても豊かで、富士山はかっこよくて、ぼくが思っていたよりもずっと素敵な国だった、と言っていた。
それを聞いて、私はなんだか誇らしい気持ちになった。
でも一方では、
「この不況に、豊か、ねぇ」
とガミくんが、まるでサラリーマンのように言っている。
「ニッポン人は、たくさん仕事をするから、すぐによくなるよ」
なんて、ウジェーヌに励まされていた。
私は思わず、
「ガミくんって、前から思ってたけど、ほんとにおっさんっぽいよね」
と言ってしまい、ガミくんには怒られたけど、みんなは爆笑だった。
そんなふうに場が盛り上がっていたとき、
「あ、時間ね」
とおばさんが言った。
私は聞き逃したけど、アナウンスが入ったらしい。
そのとたん、みんな一斉に黙ってしまった。