Je t'aime?



それからしばらく、私たちは立ったまま話をして、笑ったり、ときどきしんみりしたりした。



ウジェーヌは、フランスに帰っても日本語教室で勉強を続けるそうだ。



初めて来た日本は、とても豊かで、富士山はかっこよくて、ぼくが思っていたよりもずっと素敵な国だった、と言っていた。



それを聞いて、私はなんだか誇らしい気持ちになった。



でも一方では、



「この不況に、豊か、ねぇ」



とガミくんが、まるでサラリーマンのように言っている。



「ニッポン人は、たくさん仕事をするから、すぐによくなるよ」



なんて、ウジェーヌに励まされていた。



私は思わず、



「ガミくんって、前から思ってたけど、ほんとにおっさんっぽいよね」



と言ってしまい、ガミくんには怒られたけど、みんなは爆笑だった。



そんなふうに場が盛り上がっていたとき、



「あ、時間ね」



とおばさんが言った。



私は聞き逃したけど、アナウンスが入ったらしい。



そのとたん、みんな一斉に黙ってしまった。




< 230 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop