Je t'aime?
…ああ、とうとうお別れなんだ…。
しんみりがいやだと言っていた紗江子も、さすがにさみしそうだった。
私は…―
私は、もう会えなくなるという実感がわかなくて、それなのに勝手に涙がこみ上げてくるという、不思議な現象に戸惑っていた。
ウジェーヌが、ポケットから紙切れを出して、紗江子と私にくれた。
「それは、ぼくのメールアドレス。日本語でいいから、送ってね」
「…ありがとう」
これ以上しゃべると言葉に詰まりそうで、お礼をひとこと言うのが精一杯。
するとウジェーヌが、
「レイナ」
と言って、右手を差し出した。
―…お別れの握手。
私はその手をじっと見て、それから自分の右手をそっと重ねた。
ぎゅっと握られたその手は大きくて温かくて、ウジェーヌの人柄をそのまま感じ取ることができた。
私の手は、どうかな。
ウジェーヌに出会えて、うれしかった。
楽しかった。
その気持ち、ちゃんと伝わってる?