Je t'aime?
「…え、なに?」
相変わらず、フランス語は、全然わからない。
顔を上げると、ウジェーヌの顔が思ったよりもずっと近くて、びっくりして息が詰まった。
溜まっていた涙が少し、頬を伝った。
ウジェーヌは、ものすごく大人びた表情で微笑んで、
「もう言わないよ」
と言って、左手で私の頬の涙を拭った。
それから、握っていた右手を、そっと離した。
前にも、こんなことがあった。
たしか音楽室で、好みの女の子の話をしていたときだったかな…。
あのときも結局、意味を教えてくれなかった。
…なんて言ったんだろう。
今のは、聞いたことあるような響きだったけど、なんて言ったんだろう…。