Je t'aime?
指定された場所に、祐太はまだ来ていなかった。
見回してみると、遠くに祐太の姿が見えた。
走りながら軽く手を挙げて合図をしたけど、私は気づかないフリをした。
ちゃんと説明してもらわないと!
「ごめんな、遅くなって」
「…ひとり?」
息を切らす祐太に、私は冷たく言った。
「あ…当たり前だろ、違うんだよ、さっきの子は…」
冷房の効いた屋内なのに汗を大量にかきながら、祐太はさっきの声の主について、言い訳を始めた。
「今年の新入社員で、俺が指導担当になった子なんだけど、やたら気に入られちゃってさ」
それで、しつこいから一度だけ食事に行ったら、ますます気に入られて困っている、ということだった。
「…そんで、なんでその人は今日、ここにいるわけ?普通なら仕事でしょ?」
「それは、ほんっと偶然なんだよ。今日からフランスに出張の社員がいて、その資料とかを届けに来たんだって」
祐太はものすごい早口で、
「ほんと、なんでもないから。むしろ迷惑かけられてんだよ、俺」
と、必死に言った。
…だからって…。