Je t'aime?
「そんなの、よくあるって!日本人がアメリカでコーヒー注文するとコーラが出てくるって言うし、発音って難しいよね~!」
レジまでの長い列に並びながら、紗江子が私の背中をバンバン叩いて、励ましてくれた。
私の周りには、ズーンと重い負のオーラが漂っている。
「でも、カフェオレだよ?しょっちゅう耳にする言葉じゃん…」
「や、でも、私も一回目はわかんなかったし」
…二回目はわかったということか…。
たいしてうまくもない励ましに、余計むなしくなった。
「次のお客様、どうぞー」
やっと私たちの順番がまわってきた。
「アイスコーヒーとカフェオレと…」
紗江子がまとめて注文している間、私はカウンターにもたれて、後方の席をのぞいてみた。
相変わらず周囲の熱視線を浴びながら、ガミくんとウジェーヌがなにか話している。
すると、私の視線に気がついたウジェーヌが、小さく手を挙げてニコッとしてくれた。
さっきよりは顔色も良くなったみたい。
と、その瞬間、近くの女子高生たちが一斉に私のほうを振り返った。
私は一瞬、彼女たちの迫力にたじろいだけど、負けじと笑顔でウジェーヌに手を振り返した。
「なによあの女」的な、突き刺さるような視線さえ、なんとなく誇らしかった。