Je t'aime?
「店長さんが、奥の部屋にソファがあるから、使わせてくれるって」
「ありがとうございます」
良かった、親切な店長さんで。
「ちょっと見せてくれる?」
店長さんは、慣れた手つきでウジェーヌの脈をとったりおでこに手を当てたりした。
「たぶん、熱中症の軽いヤツじゃないかな。ちょっと横になれば治ると思うよ」
「わかるんですか?」
まさか、医者がカフェの店長をやってるわけないし。
「この店、駅前だからか、夏になると必ずこういう人が何人かいるんだ」
と、店長さんは、ちょっと困ったように笑った。
駅まで歩いて来たものの、暑くて限界を迎えたときにちょうど目に入る位置にある、涼しげなカフェ。
なるほど、入らずにはいられないだろう。
「冷たいもの飲んで、人心地つけばいいけどさ、結局倒れちゃう人もいるんだよね」
そういう人を介抱するうちに、だいたいの症状ならわかるようになってきたのだそうだ。
「そうだったんですか」
「でも、7月上旬ってのは、早いな。よっぽど暑さに弱いのかもしれないね」
そう言って、ガミくんとふたりでウジェーヌを抱え上げ、奥へと運んでくれた。