Je t'aime?
「…言えなかったんだよ」
ようやく聞き取れるくらいに、ボソッと言った。
「え?」
「ウジェーヌは言えなかったの!私たちが楽しそうにおしゃべりしてたから」
「れ、怜奈、どうした?」
三人が目を丸くして、私を見ている。
でも、止まらなかった。
「たとえばガミくんがフランスに留学したとして、慣れない環境で、知り合ったばかりの人たちが盛り上がってるときに、ガミくんなら言える?『気分悪いから休みたい』って、フランス人だらけの輪の中で、言える?」
どうしてこんなに苛立っているのか、理由はわかっていた。
ウジェーヌの異変に気づいていたのに、結局倒れるまで何もできなかった自分に、憤りを感じているのだ。
そう、「自分」に。
なのに、私は今、思いっきり八つ当たりをしている。
「い、言えない、かもな…」
ガミくんも、私の剣幕にドン引きしていた。