Je t'aime?
店の前には、この間、駅まで送ってもらったときと同じ車があった。
ガミくんのお母さんだ。
助手席側の窓を開けてくれたので、私はそこに頭を突っ込んで、
「おばさん、ウジェーヌ熱があるみたいなの。風邪かも」
と言った。
おばさんは、
「わかった。今から病院に行ってくるわ。ありがとね」
と、しっかりと私の目を見て言った。
後ろの座席に乗り込んだウジェーヌは、隣に座ったガミくんとなにか話している。
背もたれに体を預けていて、やっぱりだるそうに見えた。
紗江子からカバンを受け取って「ありがとう」と言うと、バタン、とドアを閉めた。
私は窓越しにウジェーヌとガミくんに手を振った。
ふたりも手を振り返してくれて、車は駅前大通りの流れに入っていった。
「ガミくんのお母さん、頼もしいね」
と私は紗江子に言った。
「うん。うちのママだったら、慌てちゃって大変だろうなぁ」
「うちも」
お互いに目を合わせて、ふふ、と笑った。