Je t'aime?
ウジェーヌはときどき、留学生の活動の一環で、ほかの学年やクラスを回り、フランスのことを紹介したりフランス語を教えたりしている。
フランス語といっても、挨拶程度だけど。
いわゆる、文化交流というものだ。
そのおかげで、ウジェーヌの存在は学校中の知るところとなり、自然、女の子たちの注目度も高まった。
驚いたことに、今日は授業が終わると、ウジェーヌのファンとも呼べるような女の子たちが、うちのクラスにまで来たのだそうだ。
「へぇ、全然知らなかった」
「そりゃお前ら、すぐ出てったもん」
早く音楽室に来たかったのに、ウジェーヌが愛想よく相手をするから参った、とガミくんが嘆いている。
すると紗江子が、
「好みのタイプでもいたんじゃないの~?」
と正面にいるウジェーヌを突ついた。
女の子に囲まれてうれしかったのか、やたらご機嫌なウジェーヌは、照れたように、なおかつサラリと、こう言った。
「ぼくの好みのタイプは、le droit」