手紙
始業式が終わってぞろぞろと各教室へ戻って行く生徒たち。
この中にも、恋で苦しんでいる人たちがいるのかな?
でもそれは心の中の格闘で、この中から見た目だけでは見つけられない。
ここにいる一人一人が、誰も気付かない悩みを背負っている。
口に出さない限りわからない悩み……。
そんなことを考えなければただの人混みにしか見えない。
あたしも、そんな人混みの一人でしかない。
誰も心の変化に気付くことはないんだ。
心を読まれることがないのは助かるけど、友達の心が読めないのは苦しい。
だからこそ言葉があるんだけど……必ずしも真実を話すとは限らない。
時には嘘をつかなければいけない場合だってある。
例えば、あたしが翼くんを好きだって言って、花音は応援してくれるかもしれない。
でも、それは身を引いて自分の気持ちを隠し通すかもしれない。
逆の立場なら、あたしは身を引くことだろう。
そういう場合もあるってこと。