手紙


花音は、一息置いてから言った。


「やりたいことがあるなら、我慢するべきじゃないと思う。だって、たった一度の人生だもん。もったいないじゃん」


たった一度の……人生……。


「って言ったかな。あの時の翼は、いつも一生懸命だった。でも、どれも楽しくなさそうに見えて、なにかを我慢してる気がして……だから言ったの。それで、幼馴染に完全に戻った」

「やりたいこと……」

「今の葵のやりたいことは、恋と……トキ探しかな?精一杯やるといいと思うよ。満足するまで、ぶつかってみなよ。今しか全力でぶつかれないこともあるでしょ?それができる時代を、青春って言うんだとあたしは考えるよ」


青春時代……。

青春青春てよく聞いてたけど、全然意味が分からなかった。

その意味は曖昧で、自分が青春をしてるのかすらわからなかった。

でも、その答えが今日わかった気がする。


泣いて、笑って、悩む。

それだけをするのが青春じゃない。


精一杯やった結果として付いてくるのが笑顔と涙。

全力を出せる時代を青春て呼ぶんだ。
< 116 / 300 >

この作品をシェア

pagetop