手紙


初めて、呼んだ。

それは意識してたわけじゃなくて、勝手に口が言っていた。


それを言った瞬間、翼くんの手があたしの腕を引っ張った。

簡単にバランスを崩すあたし。


次の瞬間見たものは……布団だった。

頭に重みを感じる。

あ、これ、翼くんの手だ。


その手はあたしの頭をなでてくる。


それは、布団を挟んで抱きついているような状態で……恥ずかしいけど、嬉しかった。


「初めて、言ってくれたね」

「……うん、初めて言った」


それからどれくらいだろう……?

あたしは彼の布団の上で、ただなでられ続けていた。


メールが入っていることに気付いたのは、外が少し暗くなってきた時だった。


『先に帰ってるから、うまくやってね♪』


花音からだった。
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