手紙


「思い出の場所とか、好きな場所とか、じっくり見て自分の手で描くと細かいところまで気付くことができて、その感覚が好きだから、ずっと続けてきたんだ」

「……すごいね、翼は。あたしなんて面倒くさくなって何年も続かないよ」


そんな翼に、惚れ直しちゃうよ。


「……今日は絵を描くのはやめておこうか」

「え?なんで?もしかしてあたし、邪魔かな?教室行ってた方がいい?」

「ううん、葵と話したい。学校で二人きりになるなんてあまりないからね」


いつもは花音と三人でいるから、翼と学校で二人だけってなるのは、めったにない。

あってもほんの数分だ。


そう考えたら、少し緊張してきた。

そんなことを考えてるうちに、翼は絵を描く道具をカバンに全てしまっていた。


「え?本当に描かないの?」

「たまには、観察しないでただ単に景色を見ているだけでもいいなって思ってね」


……ほんのり残る罪悪感。

でも本心、ちょっぴり嬉しかったりする。
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