手紙


しばらくしたら、二人は去って行った。

なんとなく、あたしがそろそろ怒り出すんじゃないかって思ったんだと思う。

実際、そうだけど。


「葵」

「……」


あたしはムスッとして翼から顔を背ける。

コレがあたしなりの精一杯の反抗。


「あ〜お〜い?葵ちゃ〜ん?怒った?」


それでもあたしは翼の顔をみない。

せめて、この顔から赤が消えるまで……。


その時なにかが手にぶつかり、引かれていく。

自然と歩き出す足。


……ズルいよ。


あたしの顔に赤が戻ってくる。


翼の手が、あたしの手を引いていた。
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