手紙


ザザーっという海の音、海の匂い。

ついに来てしまった、夏の定番……in冬。


海の流れは……まぁ、結構荒れている方かと……。


「ここさ、一度柚縷と花音と一緒に来たんだよね。中二の時」

「……柚縷ちゃんと……?」

「柚縷、浮き輪に乗ってたらいつの間にか流されててさ、花音が連れ戻しに行ったんだ」


お、女の子に助けてもらったの……柚縷ちゃん……。


「楽しそうだった」

「……あたしね、トキくんが見つかったら、絶対一緒に出かけたりしようと思ってた。文化祭中に見つかったら、一緒に迷路に入ろうとも思ってた」


あの時は本当に見つけたくて、見つけたくて……。

早く見つけたくてうずうずしてた。


「……結果的に、叶わなかったんだけどね」

「ガッカリした?」

「ううん、嬉しかった。だって、柚縷ちゃんだったから。足が動かなくなってたのは残念だったけど、でも再会がとても嬉しかった」
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