手紙


「えと、誕生日おめでとう」

「あ、うん。ありがとう」

「あと、バレンタインのチョコ、おいしかったよ」

「あ、よかった……」


結局、花音からはあたしがあげるものなら何でもいいって言うだけで、翼の好きな味とか聞けなかったけどね。


「それで、今日はホワイトデーだから、俺から」


……あ、そうだ、怖いんだ。

いや、感情を思い出すとか変だけど、でも怖いんだった。


だって、手作りだとしたら絶対翼の方がおいしいから。


「目を瞑って口開けて」

「……え、なんで!?」


そんなこと……なんか恥ずかしくない?

でも、優しく“早く”って急かされて、その笑顔が何をたくらんでいるのかも分からずに、あたしは目を閉じて、口を開けた。


まだ目を瞑って手のひらを出した方がましだよ……。
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