手紙


薫るチョコレートの甘い匂い。

きっと……ううん、絶対朝作ってきたチョコレートケーキの匂いだ。


あの口の中で広がった甘い匂いと同じ香りがする。


抱きしめる力が弱まって少し離れた距離に、ちょっぴり寂しさを感じて頭上にある翼の顔を見る。


今度は降り注ぐキスの雨。

甘くて、優しくて、どこか力強いキスに酔いしれる。


キスに夢中になっていく……。


何分くらいキスを繰り返していただろうか……?

数秒かもしれない、数分かもしれない。

夢中になり過ぎて、時間の感覚なんて忘れてしまった。


そっと離れた唇に、名残惜しさを感じる。


「俺のこれからの未来を、プレゼントしてもいい……?」


その言葉は、ゆっくりとあたしの胸の中に入って行った。
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