暗門が開く時
紙には、こう書かれてあった。

【私は、太田川 なつ。廊下側の一番前。休み時間、話しかけようと思ったんだけど、なかなか声かけられなくて。こんなこと聞いていいかな…悪く思わないでね。手紙読める?次の休み時間、お話ししようね】

私は、流れ出る涙を止められなかった。

初めてだった…

うれしくてこんなに泣くなんて…

信じられなかった…

時計を見ると、もう、お昼の授業が始まっていた。

起き上がると、保健の先生が来てくれた。

「気分はどう?お弁当食べれそう?」

机のある方へ連れていってくれた。

そこには、私のお弁当があった。

「お昼、同じクラスの太田川さんが、気分がよくなってたら一緒に食べようと思ったからって、待って来てくれたのよ」

私は、涙を流しながら食べた。

「もう、授業も終るし、今日は保健室で休んでいきなさい」

先生は、優しく肩に手をあて言った。

授業も終わり、ホームルームも終わって、みんなの帰る足音で目をさました。

足音が消えるのを待ち、教室へ帰った。

教室へ入ってみると、窓際で外を眺めて立っている子がいた。

「おかえり」

その子は振り返り、ニコッと微笑んだ。

太田川 なつさんだった。

一緒に帰ろうと、私を待っていてくれたのだ。

私は今まで、そんなこと考えてもみなかったので、とまどっていた。

彼女は、私の手をとり、学校の外へかけ出した。

帰り道、私達は色々な話をたくさんした。

別れ道にさしかかり、朝一緒に学校へ行く約束をしてわかれた。

家に着いた私は、お婆ちゃんやお母さんに、永遠と話し続けた。

友達ができたこと。
その子と、色々な話をしたこと。

うれしくて、何度も繰り返し聞かせた。

こんなにも、次の日が楽しみに感じたことはなかった。
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